整形外科とは
整形外科は、骨・関節・筋肉・腱などの運動器疾患や外傷に対応する専門診療科です。 以下のような症状やケガに対して専門的な診断・治療を行います。
骨折
関節の脱臼や変形
筋腱の損傷
歩行異常・麻痺
犬や猫は活発に動くため、高所からの落下・交通事故・先天性異常などで整形外科的な問題を抱えることが少なくありません。
当科では高度な画像診断・手術・リハビリテーションを通じて、運動機能の回復と生活の質(QOL)の向上を目指します。
代表的な整形外科疾患
疾患名 | 内容・症状の概要 |
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骨折 | 前脚(橈尺骨)・後脚(大腿骨・脛骨)・骨盤など。高所転落や交通事故が原因。 |
膝蓋骨脱臼(小型犬に多い) | 膝のお皿が外れ足をケンケン。重度で変形性関節症へ進行。 |
前十字靭帯断裂(中~大型犬) | 急な後肢の跛行。関節の不安定性。手術が必要なケースが多い。 |
股関節形成不全・肘関節形成不全 | 生まれつきの関節構造異常。大型犬に多く、関節炎を起こす。 |
椎間板ヘルニア(ダックスに多い) | 脊椎のクッションが飛び出し神経を圧迫。痛みや麻痺が現れる。 |
骨腫瘍(骨肉腫など) | 主に大型犬。進行が早く、断脚を含む外科的介入が必要な場合も。 |
関節炎 | 関節の炎症によって痛みや動きの制限が生じる慢性的な疾患。 |
検査方法
整形外科では、動作観察と画像検査を中心に診断を行います。
基本的な検査
視診・触診
歩行異常、関節の可動域、痛みや腫れを確認
レントゲン検査(X線)
骨折・骨変形・関節炎・骨腫瘍などの診断に有効
関節可動検査
膝蓋骨脱臼の脱臼程度、前十字靭帯の引き出し徴候などを確認
補助的検査
超音波検査
腱・靭帯の損傷、関節液の貯留の確認に有用
CT検査
肘や骨盤などの立体的な評価、複雑骨折の診断に優れる
MRI検査
神経症状を伴う場合(椎間板ヘルニアなど)に使用
関節液検査
炎症性関節炎と感染性関節炎の鑑別に有用
治療方法
整形外科の治療は、外科的治療(手術)と保存的治療に分かれます。
外科治療
- 骨折整復手術:プレート・ピン・スクリュー・創外固定器を用いて骨を固定
- 膝蓋骨脱臼手術:骨溝の形成や靭帯の補正により膝蓋骨を正常位置に固定
- 前十字靭帯断裂手術(TPLO)※1:脛骨の角度を変えて関節を安定化
- 股関節の整形手術 ※1:幼犬→三重骨盤骨切り術、成犬→人工股関節置換術など
- 椎間板ヘルニア手術 ※1:飛び出した椎間板物質の除去(椎弓切除術)
保存的治療
- 安静(ケージレスト)
- 体重管理
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの鎮痛薬
- 変形性関節症の治療として抗NGF抗体製剤(リブレラ、ソレンシア)
- 関節サプリメント(グルコサミン・コンドロイチンなど)
リハビリテーション
- ストレッチ・マッサージ
- レーザー照射
- 筋力トレーニングと関節可動域の回復プログラム
手術後は早期からのリハビリ開始が重要で、関節拘縮の予防と回復促進につながります。
手術方法
手術名 | 対象と内容 |
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骨折整復術(プレート・ピン固定) | 各種骨折。安定性が高く予後良好。 |
TPLO(前十字靭帯断裂)※1 | 脛骨をカットし角度を調整。大型犬中心に実施。 |
大腿骨頭切除術・人工股関節 | 股関節形成不全や重度の関節炎に対応。 |
椎間板ヘルニア手術 ※1 | 神経圧迫を解除し、痛み・麻痺を軽減。 |
断脚術 | 骨腫瘍や粉砕骨折などの最終的な選択肢。QOL改善が期待できる場合も。 |
いずれの手術も、術後の鎮痛管理と丁寧なリハビリを重視しています。
その他特筆すべきこと
整形外科疾患の多くは、早期の発見・適切な治療で回復が可能です。
日常生活での予防ポイント
- 体重管理
肥満は関節の大敵。適正体重を維持しましょう。 - 住環境の工夫
滑り止めマットを敷く、段差を減らす - 過度な運動を避ける
発育期の過度なジャンプや昇降は控える - サプリメントの活用
関節保護成分を取り入れ、炎症や劣化を抑える
「歩き方が変わった」「片足をかばうようにしている」といった小さな変化の早期対応が重要です。
私たち整形外科スタッフは、飼い主様と一緒にペットの”また元気に走れる日”を目指して全力でサポートします。